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死はとても身近な所にある。
ただ、生と死は微妙な距離感だけれども…
私は彼に言った。
『もし貴方が死んだら、私にその手をくれない?』
彼は困ったように笑みを浮かべている。
『私、貴方の手はすごく魅力的だと思うの。でもね、生きている温かい手では駄目なのよ…』
『じゃあ、君が僕よりも先に逝ってしまったら、僕に君の手をくれないか?』
『えぇ、勿論いいわ』
『やはり、僕達は似た者同士だね』
『何故?』
『僕も君と同じさ。ただ、少し違うけど…』
『と、言うと?』
『僕の場合は手に生命を感じる、まるであの本の異常者のように…』
彼は少し哀しげに微笑んだ。
私は見ないフリをして言った。
『私達…いえ、貴方は異常者なんかじゃないわ。ただ少し人と違うだけ。誰にでも人と違うところは沢山ある。何なら、今生きている私の手を貴方にあげてもいい…』
『いいのか…?』
『えぇ…でも両の手が無くなると不便だから左手だけね』
私が冗談混じりに笑いながら言うと、彼は真剣な顔になって私を見つめる。
『本当にいいんだな…?』
そう問い掛ける彼の表情に少し驚きながらも、私は頷いた。
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