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「……で、一応ね、雷神を兼任してるの。強くなれば大きくなれるから、俺、頑張ったんだよ?」
――吐息を織り交ぜて囁かれた言葉に、あたしの身体は、固まる。
褒めて、褒めて、と期待するような瞳に、とりあえず頭を撫でてやると喜ばれた。
いや、そうじゃなくて。
「雷、神……?」
「うんっ。こっちにも絵とかあるでしょ?
風神の奴も一緒に描かれてる奴とかさ」
雷神。
風神。
それは割とポピュラーな神様の名前では、ないだろうか。
さっき彼は、手を下げるだけで、雷を落とした。
それは決して、人間にはない力。
それを軽々と使いこなした彼は、つまり、本物の。
絶句するあたしに、彼は嬉々として話しかけ、身体中を撫で回す。
金色の瞳は欲を帯びて濡れて、蕩け。
「だいすきだよ、薺。一生、俺だけの嫁様だからね――」
唇に降って来た熱を、あたしは拒否出来なかった。
あたしは、後になって知る。
彼はあの日、暇つぶしに人間界に来て、後で臣下に文句を言われるのが面倒で獣の食料としてあたしを持って帰るつもりだったとか。
だけど他の人間と違うあたしを気に入って、嫁にするつもりになっただとか。
あの日から妖怪に襲われるようになったのは、彼が嫁様の証として残したあの痣が、妖怪を引き寄せる強い力を放っていたせいだとか。
あたしを食おうと追いかけて来た妖怪達は、全部彼が始末してただとか。
(時間がかかったのは、ちょっぴし時差があるためらしい)
あたしが十八になったら、すぐに彼の世界に連れ去り嫁様にするため、必死で修行を積み、六年で急成長し、今や妖怪のほとんどが彼を恐れる程の実力の持ち主となっているだとか。
今はそんなの全く知らず、ただ、初めてのキスが余りに濃厚で、酸素の足りない脳味噌でどうやって息をすればいいのか悩むばかりだった――。
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