動き出す悪

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某県某市   辺りは薄暗く、街頭も少ない路地を一人の男が歩いていた。 酔っているのか、足取りもおぼつかない。   「あのクソ専務めぇ…毎度毎度、無理難題を言いやがって~ヒック…いつか…いつかとっちめてやらぁ~」   上司の不条理な言葉に嫌気がさして酒に逃げたのだろう。 独り言は全て上司の愚痴。 社会とは不条理に満ち溢れている。   そんな、酔っ払いに忍び寄る一つの影。   影は異形。 影は異物。 影は邪悪。   爬虫類と思われる表皮。 毒々しい色彩を持つ舌。 人など容易く引き裂ける爪。 そして、闇に浮かぶ真っ赤な相貌。   怪物。 その言葉がピッタリ当てはまる異形の生物。 その怪物が、男の目の前に現れる。   「うぉっ!?なんだぁ?着ぐるみかい…ヒック…」 男は気付かない。 怪物が腕を振り上げている事に。 その腕が、自分の命を奪うという事に。           ぞぶり          
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