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猛は授業中に気付いた事を頭の中で纏めていた。
(あ、あの子のシャーペンの芯が折れた。)
聴力がかなり上がっていたのである。
集中して聴けば心音、隠れてウォークマンを聴いてる事すらはっきりと分かる。
窓の外に目を向けると駅が見える。
直線距離で500メートル。
その駅の時刻表が読みとれる。
指先で机をなぞる。
表面の段差がコンマ何ミリあるか、明確に分かる。
鼻から息を吸い込むと、花の香りがした。
校庭に咲く桜の花。
その花の匂い。
嗅覚の上昇。
聴力、視力、触覚、嗅覚の驚異的な上昇。
人の範疇を超えた能力。
猛は、ますます自分が人間ではない事に気付く。
「なぁ大和。さっきからゴソゴソ何やってんだ?」
猛が動いている気配が伝わったのか、友基が振り向いてヒソヒソと話しかけてきた。
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