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「――わっ。びっくりしたあ……」
あたしの声に黒い人影もビクッと肩をすくませる。
……ん?
この声は……。
「沙羅、さん?」
暗がりの中、目を凝らすと、黒い人影は沙羅さんだった。
「どうしたのー、りおちゃん。こんな夜中に」
驚いた様子であたしを見つめる沙羅さんに、先生と電話をしていたことを説明しようとした時だった。
2階からバタバタと駆け足で階段を下りる足音が聞こえてきたのは。
沙羅さんと一緒に、階段に視線を移す。
大きくなる足音と共に下りてきたのは、ヒロ兄だった。
「ヒロ兄?そんな走って、どうしたの?」
きょとんとしてたずねるあたしを、珍しく息のあがったヒロ兄が見つめてくる。
「……いや。なんか、叫び声が聞こえたから」
息を整えながら、ヒロ兄はあたしと沙羅さんを見比べた。
「――あ、ああ。電気つけないままここで沙羅さんとバッタリ会って、驚いて声あげちゃったの。ごめんね、起こしちゃったね」
「……そう。ならいいけど」
「沙羅さんも驚かせてごめんなさい。……今、帰りですか?」
沙羅さんに向き直ってペコリと頭を下げる。
「ええ。私こそ驚かせちゃったみたいでごめんね」
申し訳なさそうにする沙羅さんに、慌てて首を振る。
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