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「じゃあ、私そろそろ部屋に戻るわね」
「あ、はい。おやすみなさい」
「お騒がせしました」
ヒロ兄はそう言ってペコリと頭を下げ、沙羅さんを見送った。
沙羅さんが部屋に戻り、廊下にはあたしとヒロ兄だけが残った。
「……」
「……」
さっきの沙羅さんとあたしのぎこちない態度に、ヒロ兄が気づかないはずがない。
何か言われる、とビクビクしながら、横目でヒロ兄を見上げた。
すると、同じく横目であたしを見下ろしていたヒロ兄と目が合う。
「……俺らも戻るか」
「あ、う、うん」
予想に反して、ヒロ兄はあたしの行動に対して何も言わなかった。
不思議に思ってヒロ兄の表情を伺うけれど、無表情が代名詞のヒロ兄から、何を考えているのか読み取ることはあたしには難しい。
すると突如、ヒロ兄がプッと吹き出した。
――ん?
な、なに?
いきなり笑い出したヒロ兄を、あたしは訝しげに見つめた。
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