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そんな話をしているうちに、部屋の前まで着いた。
音を立てないように扉を開ける。
部屋では、あたしが出て行く時と変わらぬ体勢で翔兄が眠っていた。
「文字通り、すやすや寝てるな」
翔兄の寝顔を覗き込みながら、ヒロ兄が呟いた。
「起きたりはしてないみたいだね」
ヒロ兄の隣から、あたしも翔兄の寝顔を覗き込んだ。
気持ちよさそうに眠っている。
「……ったく。散々騒いで熟睡って、ガキかよ、うちの兄貴は」
呆れたようにため息をつきながらヒロ兄は言っていたけれど、表情は優しかった。
「ふふ。そこが翔兄のいいところだよね」
ね、とヒロ兄を見上げれば、ヒロ兄は静かに微笑んだ。
「――さて。じゃあもう一眠りするか」
「うん。そうだね」
そうしてあたしとヒロ兄は、それぞれの寝床に戻った。
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