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翔兄は、そんなあたしの頭を優しくポンポンと叩いた。
「まだ高校生なのに、りおが一人暮らしをするって言った時は、大反対したけど」
小さい子どもに言い聞かせるように、ゆっくりした口調。
「ちゃんとやっていけてるみたいで安心したよ。部屋は綺麗だし、友達はいいヤツばかりだし」
ポンポン、とあたしの頭の上でリズムをとっている翔兄の掌が温かい。
あたしはじっと翔兄を見つめていた。
「それを確認できたから、俺はもう満足だ。次は正月、実家でな。気をつけて帰って来いよ」
「うん」
「……あとな。うまくやっていけてるみたいだけど、世の中楽しいことばかりでもない。なんか嫌なことがあったら、いつでも帰って来いよ」
「……うん」
翔兄の隣で、ヒロ兄も優しく微笑んでいる。
温かい。
季節は冬で、外はかじかむくらいに寒いのに、今、この空間は温もりで満ちている。
「じゃあ、またな」
そう言って翔兄は、あたしの頭から手を離した。
さっきまで伝わっていた翔兄の体温が消えて、少し寂しい。
「うん、またね。来てくれてありがとう」
けれどあたしは、その寂しさをかき消すように笑顔で2人を見送った。
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