ブラザーズ!

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気を紛らわすつもりが次第に集中して、気づけばお昼近くまでピアノを弾いていた。 ふとお腹が空いたと感じて、そういえば、今朝から何も食べていなかったことに気づく。 以前に、親が送ってくれたカップラーメンが確かまだあったはず。 あたしはキッチンをゴソゴソ探して、カップラーメンを取り出す。 お湯を沸かしている時、ドアをノックする音が聞こえた。 ……誰だろう? この部屋をノックする人なんて、そういないのだけど。 恐る恐る、あたしは扉を開けた。 「――よう」 扉の向こう側にいた人物が、ひょいと手を上げる。 あたしはポカンと口を開けてその人を見つめた。 え?え? なんでいるの? だって、まだお昼なのに――……。 頭の中、「なんで」でぐるぐる。 「なんだ、そのマヌケなツラ」 驚いて言葉が出ないあたしの目の前。 フッと、いつもの意地悪な微笑みを浮かべて、石田先生があたしを見下ろしていた。
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