ブラザーズ!

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「あっ」 お湯。 沸かしてたんだった。 「なんだ?」 どんどん大きくなる音に先生が驚いている。 「あ、あ、お湯。沸かしてたんです。あの、やかん」 慌てて奥を振り返る。 「先生、とりあえず中、入ってください」 ピーピーとけたたましい音に焦り、あたしは思わず先生の腕をとって部屋の中に引き入れた。 「え、ちょ――」 先生が何か言いかけたけど、お構いなしに扉を閉めて、あたしはキッチンに走った。 注ぎ口から真白い湯気を吹きたたせていたやかんが置かれた、ガスコンロの火を止める。 途端に耳障りな音は消え、あたしはホッと息をついた。 「すみませんでした」 玄関の所に立ち尽くしていた先生に声をかける。 「どうぞ、上がってください」 深く考えずにそう言えば、先生は首を振った。 「だからお前は、そうやって簡単に男を部屋に上げるなって何度言ったら……」 「え。だ、だって、先生だからいいじゃないですか」 予想外の先生の言葉にどもってしまう。 だって、つき合ってるんならいいんじゃないの?
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