ブラザーズ!

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あの時のことが生々しく脳裏に浮かぶ。 ただでさえ激しかった動悸。 これ以上ないってくらい、更にバクバクいってる。 「あ、あ、あれは……」 なんとか言い訳を考えるけれど、頭の中は真っ白。顔は真っ赤。 「声裏返っちゃうし、震えるし。あれをビビってたと言わずになんと言う」 そんなあたしに追い討ちをかけるように先生が言葉を重ねる。 も、もうやめてー! 恥ずかし過ぎる! 「……まあ、可愛かったけどね」 ……え? 突然の先生の意外な言葉に、俯き加減になっていた顔をパッ持ち上げた。 今、かわいいって、言った? 先生は、いつもの余裕しゃくしゃくの意地悪顔であたしを見下ろしながら。 「怯えた小動物みたいで。あれはあれで、そそられたよね」 そ、そそられた!? あたしは耳を疑った。 そそられたなんて、今の、本当に先生が言ったの? 先生らしからぬ発言に、あたしはもうプチパニック状態。
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