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「……」
拗ねた顔も崩れてしまう。
変わりに、少し困ったような表情で、あたしは先生に視線を戻した。
頬杖をついて、じっとあたしを見つめていた先生と目が合う。
そして先生は静かに微笑むから、あたしの心臓はまたうるさく騒ぎ出す。
「明日までには、仕事終わらすから」
穏やかな口調で、先生は話し出した。
「初詣、行くんだろ」
「――はいっ」
現金なあたし。
初詣、という単語に、途端に笑顔。
そんなあたしの変わり身を半ば呆れたように笑いながら、先生は頷いた。
「だから、今日中に仕事、片付けたいわけよ。明日はずっと、結城といられるように」
「――っ!」
最後の言葉、先生はテーブルに身を乗り出して、あたしに囁くように呟いた。
思わず息をのむ。
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