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「あたしが……結城りおが……欲しいの?」
結城の質問に、俺は一瞬きょとんとしてしまった。
あんなにキスをして抱き締めたじゃないか。
お前も、それを受け入れて切ないため息まで漏らしていたじゃないか。
何をいまさら、と笑おうとしたけれど、改めて結城の表情を見た俺は思いとどまった。
期待を含んだ瞳をしていた。
けれどそれ以上に、不安で眉をひそめていた。
――ああ、そうか。
今までの俺の拒絶のせいで、結城の心は完全に信じることを恐れているんだな。
かわいそうな事をした、と思うけれど、そのビクビクした態度がいじらしくて、ついつい目元が緩む。
フッと笑いながら、俺は結城をまた抱き寄せた。
「ん。欲しい」
結城の後頭部に添えていた右手に力を込める。
「もう、我慢できなくなった」
腕の中、すっぽり収まった結城に覆いかぶさるようにして、俺は彼女の唇を塞いだ。
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