バック・トゥ・ザ・クリスマス

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柔らかい、結城の唇。 思い返せば、最初のキスは、結城からだった。 車の中、初めてこいつに告白されて、冗談で流そうとしたらキスされた。 あの時は、いい大人が女子高生に唇奪われるとか、かっこ悪いって思ったっけな。 でも、その内、たぶん自分でも気付かないうちに徐々に結城に惹かれていって……。 2回目は、不覚にも寝ぼけた俺が無意識に。 「キスの最中、あたしの名前を呼んでいた」と言った結城。 あの時は否定したけれど、実は、覚えていた。 あの時、寝ぼけていたけれど、確かに俺は結城だと思ってキスをしていたんだ。 夢を見ていたから、結城の。 夢だと思って、結構きわどいキスをした。 意識がはっきりして、俺の下に結城がいた時はかなりビビったっけな。 ――そして、今。 不意打ちでも、無意識でもない、正真正銘、結城とのキス。 気持ちのこもった、熱い唇。 結城を抱き締める腕にさらに力がこもった。 すると、恐る恐る、結城が俺の背中に腕を回してきた。 遠慮がちに、微かに震えているのが分かる。 いつも、驚くくらい積極的なくせにな。 そのしおらしい抱擁が微笑ましくて、キスをしながら、結城の後頭部を撫でた。
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