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せっかく離すことができたのに、また抱き寄せたくなるじゃないか。
自分の気持ちを落ち着かせるように、俺は結城の頭をポンポンと撫でた。
「今日はもう遅いから、部屋に戻れ」
そう言うと、結城はすごい勢いで顔をあげた。
顔いっぱいに、あからさまな落胆の色が広がっている。
ほんと、こいつはなんでこんなに分かりやすいかな。
ここは俺がしっかりしないと。
吹き出しそうになるのをこらえて、俺は表情を引き締めた。
「そんな顔してもダメだ。ただでさえお前は夜遊び癖があるからな」
そう言ってリビングから出るよう促すけれど、結城はもう少し、と粘ってきた。
俺の腕にしがみつき、すがるような瞳で見上げる。
……う。
そんな目で見つめるな。
努めて冷静に結城の腕を引き離し、ダメだと告げると、今度は唇を尖らせて俺を睨んできた。
……うん、拗ねてるんだな。
「そんな拗ねた顔してもダメ」
容赦なくそう言うと、結城は面白くなさそうに、眉間にシワを寄せた。
「……けち!」
……あ?
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