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けち、だと?こいつ。
俺がどれだけ、自分の気持ちを抑えつけて戻ると言っていると思ってるんだ。
それを、けち、だと?
「ガキ」
ついイラっとして、そう言い放ってしまった。
その瞬間、結城の顔が強張る。
そしてみるみる不安そうに眉を下げ、俯いてしまった。
……しまった。
少し、大人げなかったか。
何かフォローの言葉をかけようと考えていると、結城が俯いたまま、小さく呟いた。
「……だって、先生の誕生日を一緒に迎えたいのに……」
「……」
消え入るような声でそう言って、結城はますます俯いてしまう。
途端に、結城に対する申し訳なさと愛しさが一気に湧き上がってくる。
けち、と小生意気なことを言ってイラつかせ、誕生日を一緒に迎えたいと言って俺の胸をざわつかせる。
これは、結構、ぐっとくる。
たまらず、下を向いていた結城の顎を持ち上げて、ついばむように軽く唇に触れた。
突然のことに、結城は目を見開いている。
……ぷ。
おもしろい顔。
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