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けれど<怒り>は全くなくて、それよりも<恥ずかしい>気持ちになった。それだけじゃない、同時に<嬉しい>気持ちもあって、どうしたら良いのか分からずに私は下を向いた。
お互いに何も喋らずに沈黙が流れ続ける。それを破ったのは、休み時間終了を報せるチャイムだった。
立ち上がって保健室を出ようとすると、私はお礼を言いそびれていた事に気付いた。
「――っありがとう!」
突然のお礼に森口君は少しだけ驚いていた。
けれど、すぐにふっと笑顔を見せて言った。
「どういたしまして」
その笑顔はとても眩しくて、胸が高鳴った。理由は分からないけれど、叫びながら走り出したくなるような感覚。
教室に戻ってからも、あの眩しい笑顔が頭から離れることはなかった。
私がこの気持ちの正体に気付くのは、もう少し先のお話。
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