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三学期はあっという間に終わり、私達は四年生になっていた。
森口君が転校してきてから数ヶ月が経って変わった事と言えば……。
「くらえモリー! 俺の魔球受けてみろ!」
掃除のために持っていた雑巾を丸め、いっちゃんは振りかぶって投げた。
「ナオのへなちょこ球なんか止まって見えるわ!」
雑巾ボールを、彼はバットのように持った箒で思いっきり打つ。
そして、打たれた雑巾ボールは、二人を注意しようとして近づいた私の顔に命中した。
「……ナイスキャッチ」
いっちゃんがそう言うと、私は雑巾を顔面に投げつけてやった。
そして、この隙に逃げ出そうとしている彼を私は見逃さない。
「か~ず~よ~し~」
私が声をかけた瞬間、彼は教室から飛び出す。
追いかける為に私も教室から飛び出して叫んだ。
「コラー! 逃げるなー!」
人気のない廊下の行き止まりまで追い詰めると、彼は観念して立ち止まった。
お互いに全力疾走したせいで、ぜぇぜぇ言っている。
「わ、悪かったって……だから落ち着」
そして、静かな廊下に彼の声が響いた。
「――いってぇ!」
その理由は、私がチョップを頭にお見舞いしてやったからだった。
「あー、スッキリした」
「この、ゴリラ女」
頭を抱えながら、和由がボソリと呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「は?」
「つーか、ゴリラより強いわ。もうゴジラだわ」
「ゴリラでもゴジラでもないし! 元はといえばあんたらが悪いんでしょ!」
ぎゃあぎゃあと、私達が口喧嘩していると少し離れた場所から聞き慣れた声が聞こえる。
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