プロローグ

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 本棚の中にある一冊のアルバムを取り出して私はソファに座る。捲ってみるとそこには幼い頃の私が笑っている。あの頃を思い返すと恥ずかしい思い出ばっかりだったような気がする。  沢山泣いて、笑って、怒って、誰かを傷付けてしまったり誰かに傷付けられたり。相手を信じたくても信じられなかったり。  楽しいことばかりじゃなかったけれど、振り返ってみればあの辛い日々すらも愛おしく思えるんだ。  私達はとても幼くて、でもそう思われたくなくて背伸びばかりしていたよね。  恋の辛さも知って、想われる事の幸せも知った。 大人になるにつれて色々な事を忘れてしまいがちだけど私は忘れない。一生、忘れない…。  初めて恋をしたあの日や子供なりに一生懸命だった事将来に悩んで必死にもがいた事。全部、私の宝物だったから。  感傷に浸りながらアルバムを捲っていると一枚の写真が目に入る。それは私が小学校三年生の時の写真だった。  二人の男の子の間で楽しそうに笑う私がそこに居て、思わず顔が綻ぶ。照れくさいけれど、あれは運命だったんだと思う。  小学校三年、三学期の初日。今でもよく覚えている。  ――あの宝物の日々を思い出しながら私はそっと目を閉じた。
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