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「血が出てる、保健室行かないと」
「面倒だからいいよ! それより続きやろ!」
私は、そう言いながら笑って、膝に付いてしまった砂を払う。
すると、突然森口君が私の腕を掴んだ。
びっくりして呆気にとられていると、森口君が皆に『続けてて』と言い、
そのまま歩き出したのだ。
彼に腕を引かれ、連れてこられた場所は、校庭の隅にある水場だった。
「バイ菌入るといけないから、洗って」
ここまで来たら拒否しても無意味だなと思い、大人しく従った。
私は、傷口についていた砂を洗い流し終えて、ハンカチを持っていないことに気付く。服の袖で拭えばいいか、と呑気に考えたその時だった。
森口君がキレイなハンカチでそっと拭いてくれた。その瞬間、自分がハンカチを持っていない事がなんだかとても恥ずかしくなってしまい思わず足を引っ込めてぶっきらぼうに言った。
「――っ汚れるからいい!」
彼はそんな私の態度に嫌な顔一つしないで傷口を優しく拭きながら言う。
「汚れてもいいよ。それより絆創膏貰いに行こ」
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