17人が本棚に入れています
本棚に追加
…………………
駐輪場に着くと、誉は止めていた愛車のHonda製CBR600RR コニカミノルタに跨り、ハンドルに掛けていたフルフェイスヘルムを被り顎下のベルトを絞める。
キーを差し込みエンジンを温めていると、漸く仁王が校舎玄関から駆け足で出てきた。
その顔は無表情と言うか、若干青ざめており横一文字に結んだ口元と苦虫を噛み潰したような様子に、誉は何かを悟った。
「…その様子だと、山田のおっちゃんはBerserkerになっちまったか?」
もう一つのヘルメットを仁王へ投げ渡しながら尋ねる誉に、仁王はラケットバッグを背負い直しつつ一言。
「There is no victory without sacrifice.(犠牲なくして勝利は無い)」
「オプティマス・プライムだったな。Transformer、好きだけどな…特にビーストウォーズが」
「…公式がカオスじゃぞ?あれ」
呟くように言う誉の後ろに仁王が乗り腰に抱きつくと、誉がギアを入れ替えバイクを発進させた。
校舎から二人が遠ざかる中、校内では校務員の山田さん(76)がいつも愛用しているマキタ製チェーンソーを振り上げ、超人張りの身体能力をフル活用して郡司と霧緒の二人を追い掛けていた。
これが此処、"八十神高校"の日常と化している事を生徒達は認識していた。
只一人、翌日からこの高校へ籍を置く事になる転校生を除いて…。
最初のコメントを投稿しよう!