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三枝家は、稲羽市を一望できる津雲山(ツクモザン)の中腹に広がる広大な土地に大正時代を彷彿とする大きな屋敷を構えている。
稲羽市の地図上で説明すると鮫川を渡り稲羽中央通り商店街を抜け、辰姫神社の裏から駅付近へ続く里山地区を真っ直ぐ抜けた先である。
近くに送電塔が有る為、一応道は整地されている。が、道の勾配が16度とかなりの角度が有る故三枝家への訪問者か電力会社の関係者、もしくはモノ好きな走り屋や登山客位にしか需要が無い。
その荒れたアスファルト道をバイクを巧みに操縦しながら、誉と仁王が左右に生い茂る森林に目を配る。
「…見えるか、雅治」
仁王を名前で呼んだ誉に、仁王がゴーグルを僅かに上にずらしながら答える。
「あぁ…、今見えた。今日は馬鹿に多いのぉ。"龍脈"が開く日ではないし、"新月"にも当て嵌まらん。じゃが…やけに今日は釘打つ影が見える」
そう言った仁王の視線の先、樹齢100年程の杉の木の枝の上で右手を振り上げ左手に持ったナニかを木の幹に打ち付ける何者かの姿が捉えられている。
誉がジャケットの胸ポケットに刺さっている管を抜くと、ソレを森の方に向ける。
「飛翔せよ、"オシチ"」
召喚と同時に、管から火の粉を散らして妖鳥オシテが浅葱色の翼を広げて羽ばたく。
[お呼びでありんすか?誉坊ちゃん]
「坊ちゃん呼びは止めろ、それよりオシチ。屋敷付近にどっかの誰かが送ってきた"呪"が撒き散らかれてる、早急にアレを片付けて速達便で送り返せ。」
[お土産は着けますかい?]
「任せる」
[承知いたしました]
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