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「俺……北に行こうと思うんだ」
そう土方さんが言ったのは、会津に勝ち目がないと誰もが思い始めた頃だった。
北で再起を図る。
いつかは言い出すだろうと思っていた。
あの人の頭の中は勝つこと……そして新選組を生かす事だけだから。
「……そうですか」
土方さんは会津を捨てて北へ行く。
じゃあ、俺は?
あの人を尊敬し、あの人の手足になる事。
それが俺の全てだった。
だが、俺はすぐに一緒に行くとは言えなかった。
会津には恩義がある。
その会津を見捨てる事が、俺にはどうしても出来そうにない。
じゃあ、ここに残るのか?
土方さんと離れる?
もう近藤さんも総司も、あの人の側にはいないのに?
あの人を一人にするのか?
土方さんを取るか、会津を取るか……
俺はどうしたらいいのか分からなかった。
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