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斎藤一。
新選組三番隊隊長の彼は、土方歳三崇拝者だった。
「会津が落ち、すぐに副長を追い掛けようとしたのですが、戦でなかなか蝦夷に渡れず……しかし、副長がご無事で良かったです!」
とりあえず、泣きそうな斎藤を引きずるように五稜郭の土方の部屋へと連れ込んだ。
「ああ、お前も無事で良かった」
今では数少ない新選組幹部である。
しかも斎藤は、江戸にいた頃からの知り合いだ。
土方も懐かしさで頬を緩める。
「副長、これからは俺が副長の手足となってお役に立ちますから、お任せください」
その言葉を聞いて、それまで黙っていた島田が前に出る。
「土方さんの手足は私なので、斎藤さんは斎藤さんでお仕事してください」
「悪いが、これだけは譲れない」
バチバチと斎藤と島田の間で火花散る。
そんな二人を見ながら、土方はめんどくさい事になりそうだと小さくため息を吐くのだった。
【完】
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