~ 第一章 天使の降り立つ日 ~

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 その者は白地の布に身を纏わせ、背中には同系色の翼を付け、手にはメモ帳のようなものを持ち、羽ペンで何かを記入しながらふわふわと浮きながら旋回していた。清明の周囲を。  突然の出来事に思わず足を止め、眼を閉じてからこめかみを押さえる。  思考と視覚を一度リセットし、今し方見た者は気のせいだと現実逃避じみた望みの下、閉じられた瞼を開く。 (よし、誰もいないな。まさか寝不足の所為で幻覚まで見っ――――)  否定するように内心で呟いていた言葉は最後まで続くことなく、現実は、望みとは打ち砕くものとでもいうかのように消え去った。  ただ消えたのは望みだけでなく、つい先程まで感じていた苛立ちもまた、綺麗に消えている辺り全てがマイナスというわけではなかったようだ。トータルとしては言うまでもなくマイナスだが……。  現在清明の視界には、先程旋回していた者が映っていた。  今度は見間違えなどではなく確かにそこに存在する者に対し、内心諦めのみを含んだ溜息を吐き、路地へと入っていく。  そこはビルとビルの間であるため薄暗く、ジメジメし、ゴミが散乱している上、そこからすえた臭いまでもするが取り敢えずは我慢することにした。  大通りから目立たぬ位置で壁に背を預け待つこと数秒。先程から人の周りをウロチョロしていた者が予想通り後を追ってきた。  翼を付けた者が正面に静止するのを見計らってジロリと睨み付ける。  その行動に彼女はというと一度小首を傾げ、羽ペンを走らせていた。  その態度になれている清明は冷静な目で相手を分析する。
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