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その手のものに免疫がない清明の鼓動は自然と早くなっていた。
話しかけられた彼女はというとおろおろとしながら、どうしよう、これじゃあ折角ルシファー様が任せてくれた仕事なのにいきなり失敗ですか!? などと口走っていた。
その間に清明はわざとらしく咳き込み、気持ちを無理やり落ち着かせてから話し掛ける。
「で、お前は何がしたくて俺に付きまとってたんだ?」
「え? あ、はい――――え~っと、見られてしまってるわけですから正直に話しますけど、その前に一ついいですか?」
おろおろしていたわりに存外思考の回転は速いのか、冷静さを取り戻し、逆に問いかけてきた。
まだ学校に行くには十分時間もあるため清明も頷いて返す。
しかしその時彼は気付いていないだけで、本当は悠長にしている暇などなかった。
「有難う御座います。聞きたかったことですが、その左肩にいる霊は放置していて大丈夫なんですか?」
彼女の一言に、清明の表情は固まる。
そして油を挿し忘れ、錆び付いてしまった機械の如く左肩のある位置に首を動かす。
そこには、白い手が置かれ、視線を上に動かすと、毛糸のセーターにロングスカートに身を包んだ長髪の者がいた。まだ時折冷え込むことがあるにしてももう直ぐ夏の季節にシフトするこの時期には些か異質な格好である。
だが、それらは清明からしたら小さきこと。幽霊に時期など関係ないからだ。
重力に反逆し逆さに立つが、髪もスカートも地面に向かって落ちていないのも瑣末なこと。
――――何故ならば、
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