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「そんなに緊張する必要はないと思うんだけど。それよりエル、先輩は禁止っていつも言ってるわよね」
先輩に言われ、エル・ヘンリットは先程から浮かべていた緊張という文字を貼り付けた面持ちから、思わず言ってしまった失言に慌てて取り繕う。
「えっと、あの、その……す、すみませんダウエルさん」
そして自分の失敗に対し謝るために歩みを止め、頭を下げた。
その行動に残念そうな、はたまた拗ねたような態度で先輩は答える。
「もう、それじゃあ硬いでしょ。確かに私達は先輩と後輩だけどパートナーでもあったんだから、気楽にセレスって呼んでって言ってるのに」
と、セレスティア・ダウエルは言っているが、エルからしたらとんでもないとしか思えなかった。
セレスが言っていることは事実ではあるものの、彼女とは位が違いすぎた。
彼女達の翼は飾りなどではなく、それ自体が力の象徴であり、位の差でもあった。
一対差があるだけで全く違うのに二対も違うセレスはエル達一対の者にとって雲の上の存在だった。
だからといって断るわけにも行かず、
「分かりました。え、っと、セ、セレス……さん」
「さん、は要らないんだけどね。ま、いっか」
最終的にはそこに落ち着いた。
そのことにほっと胸を撫で下ろし、二人は再び歩み始める。
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