~ プロローグ ~

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 暫らくし、二人が歩みを止めたのはとある木製の扉の前だった。  それは見るからに重厚な作りをされ、表面には匠を凝らされた彫りがなされていた。  しかしエルはそんなものに目もいかなかった。  ただあるのは緊張、扉を一つ隔てているにも関わらず感じる重圧(プレッシャー)は凄まじかった。  その証拠に先程までふざけていたセレスも今は引き締められた表情を浮かべている。 (この先に) 「死天(してん)部署所属、セレスティア・ダウエル」  そしてセレスが扉の前で宣言するように言葉を発し始めた。 (この先に憧れの) 「同じく死天部署所属、エル・ヘンリットを」 (憧れのルシファー様がいらっしゃる!) 「ルシファー様の命によりお連れしました」  セレスが言い終え、暫しの沈黙が降りた後、重厚な扉が誰も触れていないにも拘らずゆっくりとだが開き始めた。  扉が開ききるまで掛かった時間は五秒程。  だがエルにはそれが数十分にも数時間にも感じられた。  扉を開くことにより中に溜まっていた天力が吐き出され、それが位の低いエルの脳を麻痺させるには十分すぎた。
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