15人が本棚に入れています
本棚に追加
その姿にセレスは仕方がないなといった表情をし、ルシファーは口元に手を当て、くすくすと笑っていた。
怒っていないことに安堵したのは少しだけ、後は羞恥心に更に顔を赤らめた。
「さあ、もうお顔をお上げになって」
「……はぃ」
ルシファーの言葉に蚊の鳴くような情けない返答をし、エルは直立する。
その姿が可笑しかったのか、ルシファーは一度クスリと笑ってから、
「そう緊張なさらずに。いつものようにリラックスした状態で構いませんよ」
「は、はひ!」
落ち着くよう促してくるが、とても出来る心境ではなく、思わず噛んでしまった。
そのことにルシファーは再び可笑しそうに微笑を浮かべてから本題に入った。
「貴女と呼んだのは、訳あって仕事を頼みたく来て頂きました」
ルシファーより頼まれる仕事、それが半ばパニック状態に陥っていたエルの思考を固めるのに十分だった。
自然と表情が引き締められ、合わせて唾液が嚥下される。
そして一言一句、音域に至るまで聞き逃さぬよう勤めた。
「その仕事の内容は――――」
この後に続く言葉が、一人の少年と少女が出会うための始まりの言葉となった。
最初のコメントを投稿しよう!