4人が本棚に入れています
本棚に追加
少年は泣きながら言った。
「可哀想に、辛かっただろう」
少女は笑いながら言った。
「可哀想に、なんて哀れなの」
「君には不幸しか訪れないのに、どれが不幸か分からなくなって、涙を消してしまったんだね。笑いながら幸福を謳うんだね」
「貴方には幸福しか訪れないのに、どれが幸福か分からなくなって、笑顔を消してしまったのね。泣きながら不幸を嘆くのね」
少年はただ、幸せすぎた。
少女はただ、不幸せすぎた。
それだけのこと。ただ、それだけのこと。
「君の不幸を聞かせてよ。僕が幸福を見つけられるために」
「貴方の幸福を聞かせて。私が不幸を見つけられるために」
「「自分を見失ってしまったから」」
とある少年と、とある少女が出会いました。
それは幸せなのか、不幸せなのか。
少年と少女にはわかりませんでした。
「なんて、つまらない。不幸な世界」
「なんて、美しい。幸福な世界」
この2つの言葉を、どちらが言ったのか。
それもまた、わかりませんでした。
《FIN》
最初のコメントを投稿しよう!