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「なにを言ってるんだい?出口はあるさ」
『私は真実を告げたんだ。シロウサギ、クロウサギ。君たちはこの森から出られないんだ』
千年樹は嘘をつきました。
出口は木々で覆い隠しました。
そして、どこを行っても自分の下へ来るようにしました。
「そんなばかな!」
「出口はどこなんだい?」
嘘は嘘でしかありません。
『知ってるかい?ねえ、知ってるかい?』
でも、千年樹は知っていました。
『君たちは…いや、この森に入ってきた者はみんな』
嘘でも、信じれば真実になることを。
『私の傍で生きるんだよ』
もしも、誰かが話してあげていれば
もしも、誰かが話を聞いてあげていれば
もしも、誰かが傍にいてくれていれば
『私は、嘘はつかないよ』
このひとりぼっちの千年樹は、嘘をつかずにいられたのかもしれません。
《FIN》
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