prologue~1999年夏~

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仲間はすぐに、 『淳、お前、みんなを待たせておいて、人形遊びしてんのかよ』 とニヤニヤ笑いながら、冷やかす。 『んなワケないだろ。人形が落ちてたから…』 『そんな汚ねぇ人形なんか、捨てちまえよ』 仲間は淳の手から人形を引ったくろうとする。 『ちょっと、待てよ!!』 淳は慌て人形を背中に隠す。 『何だよ、お前。やっぱ、女みたいに』 『違うって!!』 そこまで言うと、淳は黙った。 捨てるなんて、可哀想な気がする。しかし、それを言ったら余計に馬鹿にされてしまう…。 そういった、思いが言葉を詰まらせたのだ。 淳はどうして良いか判らずに、おずおずと視線を下げた。 穏やかな波に揺られたのだろう。 岩と岩の間からゴムボールが、流れ出てきている。 心の中で、ラッキーと叫びながら、ボールを拾い上げ、 『良いから、続けようぜ』 と仲間の背中を押す。
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