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壱
長かった梅雨も、数日前に明けた。
梅雨の時期、あれほど荒れた海も今は深い蒼さを湛えながら、おだやかに凪いで輝いている。
そんな夕暮れ時―。
野崎 淳は、クラスメート達と海辺で遊んでいた。
昼間のジリジリ焼け付くような日差しは幾分、和らいだものの、まだまだ西の空からは、眩しい日差しが差し。はしゃぐ彼等の肌を焼く。
学校が終わるなり、家の玄関にランドセルを投げ、浜辺まで走ってきた。
いよいよ夏本番。
夏休みまで、後、一週間である。
そんな解放感も手伝い、波打ち際で水を掛け合ったり、相撲の真似事をしたりするだけで、淳の心はウキウキと踊った。
浜辺には、淳達数人しかいない。
夏休み前の夕暮れ時と言う事もあるが、最盛期になっても、余所から人がバカンスにやってくることは稀(まれ)だった。
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