件(くだん)

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君が何者でも関係ないよ 化け物の君がほんとうの姿で それが理由で結婚できないとしたら 僕は化け物に恋した気違いでいいんだ 君を愛してる、姿なんか気にならない どうだっていいんだ いけません、あなたは人間です 私のような妖怪崩れなど忘れて どうか幸せに…… 無理だ!君がいないのにどうやって 幸せになれるというんだ お願いします…お願い、 私の頼みを聞いて下さい どうか私を忘れて下さい 彼女の瞳には揺るがない光が宿っていた 引いてくれそうにはない わかった、僕は君を忘れる だから僕の頼みを聞いてくれないか 私に出来ることならば 何でもいたします 最後に答えてくれないか 君は僕を愛していたかい? 彼女はかっと目を見開いて しばらく固まっていたが やがて掠れた声で言った 私は貴方様を心よりお慕い 申し上げておりました 私は貴方様を…愛しております 目の前がぼやけて表情が読み取れないが 震える声で泣いていると思った 気がつけば彼女を抱きしめていた
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