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ノックの音に許可を出し、中へいれる。
入ってきたのは長身の男。
前髪で右目を隠し、肩まである後ろ髪をバレッタでとめた赤茶の男は唯一見える黒い瞳を細めた。
大丈夫か心配したくなるぐらい白い肌に、ワインレッドのワイシャツが栄える。
ペンを動かしていた手を止め、書類を手繰り寄せた。
「此処も機器等を導入すれば他のように楽になるでしょうに。わざわざ呼びに来るのは大変でしょう?」
「………なんに対する当てつけだ。」
「あぁ、そうでした。機械音痴の看守長さんには難しいんでしたね。ふふふ、すみません。」
にこやかに笑いながら入ってきた男に口角が引き攣る。
ワインレッドのワイシャツに黒いネクタイ。久々に見る仕事着だが、何かが足りない。
だがすぐに納得する。
「行く先を告げていなかったな。今回の宛先は三日前だ。」
「おや?過去は管轄外では…?」
「わかっているだろうに、それを聞くとは。本当に貴様は質が悪いな。」
ため息と共に書類を男に投げつけた。
慌てず受け止める男に苛立ちを感じつつも読め、と目をやる。
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