第一弾・零

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書類から顔をあげた男に封筒を手渡し、足を組み替えた。 「勿論、やってくれるな。」 それは疑問形ではなく断定だった。 男が断るはずがないと確信があったからだろう。 「ふふふ、私が看守長さんのお願いを断る訳がないでしょう。」 誰がいつお願いをしたというのだ。依頼だと言っておろうが。 開きそうになる口を閉じ、眉間にシワを寄せ睨みつけた。 恐い恐いと肩を竦め、胸に手を置き、恭しく頭を下げる男はどこかの執事のようにも見える。 「謹んでお請けいたします。」 その口からでたのは承諾の言葉。 聞くまでもなかったな。 そっと息を吐いた。 「始めからそう言えばいいのだ。全く、本当に貴様は口が減らんな。」 「減らない、減らせませんよ、減らせないのですから、減らす必要もありませんし、感じません。」 「くだらん。さっさと行け。貴様といると疲れる。」 再び書類に向かい、さらさらとペンを動かしながら、もう片方の手で出ていくよう促す。 「ふふふ、では行って参ります」 恭しく頭を下げ、静かに部屋を出て行く。 遠ざかる足音が聞こえなくなったところでペンを置き、電話を取った。 「聞いていたな。」 繋がっていたのであろう電話からは是の言葉が聞こえる。 「この仕事はもう私の管轄内に入った。余計な手出しをして歪めるなよ。」 そう言うと一方的に通話を切る。まだなにか言っていた気もするが、どうせ小言なので気になどしない。 その際バキッと、何とも軽快な音が鳴ったが、それはご愛嬌ということで。 「やれやれ。遊ばずに早めに終わらせろよ。」 唯一ある窓から見える晴れ渡る空を眩しそうに見つめ、ペンを取った。 第一弾・零 -fin-
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