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「え……?」
「…………」
やけに静かだった風がよく聞こえる。静寂の中で俺は顔が熱くなるのを感じていた。
「なに言ってるの?」
その聞き返しは純粋な疑問ではなく、拒否の意に聞こえた。拒絶……されたか。まあ、しょうが──
「──私達もう友達でしょ?」
「な……い? ──え?」
「だから、もう私達はとっくに友達なんだよ」
さも当然のように澪はいい放った。
俺は数秒唖然とした後、喜びが沸き上がってくるのを感じはじめていた。
「本当に!?」
喜びによるこの胸の動機が、嘘みたいに思えて聞き返す。
零にとってはくどい質問のハズだが、彼女は嫌な素振り何一つ見せずに、
「本当だよ。よろしくね、──ふみき!」
屈託のない笑顔が、瞳に映る。網膜に焼き付けておきたい程に眩しい笑顔。
口角が上がってるのがよくわかるが、それを止められなくて、止めたくなくて、止める必要もなくて──
「…………」
そんな幸せバンザイな気持ちを惜しげもなく顔に表している俺を、零はなにか新鮮なものを見る目付きで凝視していた。
「なんだ……」
零はどこか呆けたように、
「ふみき、ちゃんと笑えるんじゃない」
「え……?」
指摘された瞬間顔が熱くて、俺はそっぽ向いて黙りこくる。
その後追随する形で、妹二人が零に加勢し、三人で俺をからかいつづけた。
三人とも角がなくなったように俺をイジって楽しんでいた。
俺も三人にささやかな抵抗を繰り返したが、勝てなかった。
──こうして俺の生活は、強かな幼なじみと共に進みはじめたのだった。
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