もしもあなたに会わなければ

12/28
前へ
/30ページ
次へ
「え……?」 「…………」 やけに静かだった風がよく聞こえる。静寂の中で俺は顔が熱くなるのを感じていた。 「なに言ってるの?」 その聞き返しは純粋な疑問ではなく、拒否の意に聞こえた。拒絶……されたか。まあ、しょうが── 「──私達もう友達でしょ?」 「な……い? ──え?」 「だから、もう私達はとっくに友達なんだよ」 さも当然のように澪はいい放った。 俺は数秒唖然とした後、喜びが沸き上がってくるのを感じはじめていた。 「本当に!?」 喜びによるこの胸の動機が、嘘みたいに思えて聞き返す。 零にとってはくどい質問のハズだが、彼女は嫌な素振り何一つ見せずに、 「本当だよ。よろしくね、──ふみき!」 屈託のない笑顔が、瞳に映る。網膜に焼き付けておきたい程に眩しい笑顔。 口角が上がってるのがよくわかるが、それを止められなくて、止めたくなくて、止める必要もなくて── 「…………」 そんな幸せバンザイな気持ちを惜しげもなく顔に表している俺を、零はなにか新鮮なものを見る目付きで凝視していた。 「なんだ……」 零はどこか呆けたように、 「ふみき、ちゃんと笑えるんじゃない」 「え……?」 指摘された瞬間顔が熱くて、俺はそっぽ向いて黙りこくる。 その後追随する形で、妹二人が零に加勢し、三人で俺をからかいつづけた。 三人とも角がなくなったように俺をイジって楽しんでいた。 俺も三人にささやかな抵抗を繰り返したが、勝てなかった。 ──こうして俺の生活は、強かな幼なじみと共に進みはじめたのだった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加