もしもあなたに会わなければ

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† 家に帰って、しばらく経つと親父が帰宅した。 いつも出迎えるのは妹達の役目なのだが、今日に限っては俺を加えた三人で親父を待っていた。 「……おう、ただいま」 どこか違和感を感じたのか、親父は首を傾げながらも帰宅の挨拶をする。正直俺も妹達に無理矢理連れてこられたので、若干腑に落ちなかったのだが、それでも明るく答えようとした。 「「おかえりなさい!」」 と元気のいい妹達とはうってかわって、俺の挨拶はというと。 「……おかえり」 声量控えめだった。しかし親父は気を悪くすることなく、しゃがんで俺の頭を掻き回した。 「どうしたお前、いつもより声が弾んでんぞ?」 「……別に、なんでも──」 ない、という部分は言葉にはならなかった。親父が俺を遮ったせいだ。 「好きな女の子でもできたのか?」 「……い、いや、そんなことは──」 ない、という部分は声にならなかった。妹達が邪魔したせいで。 「アニキ顔まっか!」 「やっぱお姉ちゃんのことすきなんだー!」 「ち、違うよ。零ちゃんは友達だよ……」 しかし俺の言い分はやはり弾かれて、親父は妹達と悪ノリして俺に何度も何度も言及する。 俺は恥ずかしさから黙っていたが、彼らが一向に攻撃の手を緩めることはなかった。
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