もしもあなたに会わなければ

16/28
前へ
/30ページ
次へ
「そう言えば……」 零ちゃんがなにか思い出しように呟き、訊ねた。 「あなた部活はやるの?」 「さあ?」 「運動部は? あなた陸上やってたじゃない」 「悪くはないかもな。ただ……」 俺は陸上部だった。 これでも結構走ることに自信はある。 それでも、 「もういいかな。ある程度満足したから」 「そう? それはちょっと残念かも」 「零ちゃんこそ生徒会入らずに運動部に入ればよかったのに。中学の頃はよく助っ人してたじゃん」 「私は日課で鍛えていたことの延長にそういうものがあったから。それに今となってはあなたには勝てないし」 そりゃそうだろう。明確に体格差が出始めるものだ。 「あーあ、昔は私が勝ってたのになぁ……」 楽しそうに、いや、ちょっぴり寂しさを挟んで、溜め息を吐いた零ちゃん。たいして気にすることでもないと思うけど。 「女子の中じゃ零ちゃん速い方だろ?」 「そうだけど……、やっぱり男女差ってあるものなのね。残念だわ」 「それほどまでに俺達が成長したってことだろ。いつまでも子供のまんまでなんかいられないんだから」 「あら意外、ふみきが生意気に正論を説いているわ。成長したっていうのはあながち嘘じゃないみたいね」 あんたの中身は変わったようでかわらないな。 だが外見は変わる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加