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「アリス……」
「なに、兄さん」
「いつもアリガトウ」
「……気にしないで?私の好きでやってる事なんだから」
母上の目を盗んで、僕に合いにきてくれるアリス。
彼女こそ、僕の生きている意味だった。
彼女だって、母上にバレたらただじゃ居られないだろう。
それでも合いに来てくれるアリスに、僕は感動の涙すら流した。
「ほら、動かないで」
「う、痛たた…ッ」
体には、治療を施しても消えないような生傷や火傷の後がたくさんある。
妹はそれを痛々しい目で見つめて、そっと撫でていた。
「可哀想に……」
「…大丈夫、へっちゃらさ」
撫でる手のひらがこちょばしくて、それをごまかすように、僕は強がる。
「顔もやつれて来ちゃって…」
妹は優しい子だ。
落ちこぼれである僕にもかかわらず、人として接してくれる…。
一日で一番至福の出来事であった。
けどそれが…
密よりも甘い幻想とも知らずに…。
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