一般道路を蠢く幽霊

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 上から振り下ろされた、ような攻撃を脇をすり抜けるような感じでかわした体。先輩の方へと来たこのラインは危ない。  幽霊騒動の元凶であるこいつが、当たらない俺から後ろにいる先輩へ狙いを付けるかもしれない。  この場から逃げて下さい。と、先輩に指示を出そうとしたら。  前にいる存在感が急に無くなって、俺の後ろへと着地音と共に移動しやがった。人間1人分を優に越したジャンプ力で、こいつは俺を飛び越し。 「ひっ……」  化け物が移動した際の風圧にスカートが捲れ、後ろに尻餅着いて固まる先輩の前に行きやがったんだ。  ヤバい、これはいくらなんでも最悪だ。 「先輩に手を出すな! この化け物が」  渾身の力を込めて、そいつの後ろ姿であろうところに殴りに掛かった。  しかし、目測で分からない奴相手のどの辺を殴れば良いのか見当付かず。適当に、居そうな場所に全力を叩き込んだ。  が、盛大に空振る結果に。それどころか。 「あれ……って、あ」  そのままの勢いで先輩までたどり着いて、バランスを崩して覆い被さる形になってしまう。間に居るハズであった化け物は、もう既にここには居ない。  殴り掛かる前にもう移動されたのか。つまり、あいつは――――――って、ヤバ。 「もう……さっき言った事忘れたの? 昼間から、人目で付くところではこんな……」  なんて、言われそうな状態をしているのを思い出し、すかさず先輩の上から飛び退いて離れるが。そんなリアクションは返って来ず。  顔面蒼白で、今にも恐怖で泣きそうな表情をした先輩がそこにいた。 「…………すみません」  怖い思いをさせてしまって。こんな事に巻き込んでしまって。そして何より、先輩を慰める時間が無さそうという事を。  言葉1つだけで謝り、先輩の頭に手を乗せた後歩道橋を俺は降りる。  体はさっき来た方角とは反対の方へ向かっている。それに従い走り行く時、歩道橋へ一度顔を向ける。  先輩はへたり込んだ姿のままであの場からまだ動いていなかった。本当にすみません。ともう一度だけ心内で謝ってから、目指している方向に走り行く。  後でちゃんと詫びを入れよう。その為にも、いち早くこの噂を終わらせなければ。  地を蹴る足に、限界以上の力を入れた。
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