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「流行の最先端を突っ走ってドブにハマって死ねば良いバカが言っていたんですけど。先輩、最近幽霊を目撃した噂が流れているのは知っていますか?」
「相変わらず嫌われているね、その娘。
幽霊の噂……か。私じゃないよ、私じゃないから鳴家君」
「それくらい分かっていますよ。第一先輩が仮に見られたところで、ちょっと貧相な体付きの金髪をした東高校の女子生徒が見えるだけで、誰が騒ぎましょうか」
「ム、言い返したい部分があるけど言い返せないのに腹が立つかな。これでも毎日バストアップ運動してるんだけどな、やっぱり効果的な方法は――――鳴家君、毎日揉んで」
「丁重にお断りします」と、何を言ってんだよこの人はと呆れる提案を拒否し、「そんなぁ、いけず……」なんてがっかりする先輩に。
話を戻すように俺は言う。
「先輩ではないんですから噂は本当でしょう。そして世間で流れているからには確実にいますよ、幽霊騒ぎの元凶が。
ですから放課後探しに行きませんか? 半幽霊である先輩でしたらもしかしたら、幽霊探しの役に立つかもしれませんし」
噂では足しか無いという野郎だ。体半分以下の存在の奴には、半存在の先輩ならば見つけられるかもしれないから。
その思惑の下、放課後の行動を共にと提案をしたら。
「デート、デートだよねそれって! や、やったよ椛。言い続けたら愛がちゃんと伝わったよ」
頬を赤く染めながら、嬉しそうに体をクネクネと揺らしている先輩がそこにいた。
いや、元凶探しの提案でありデートではないんだが、先輩の良いように勘違いしてもらっては困る。
「言っておきますがデートではなくて調査ですよ。デートなんて浮ついた気持ちで調査でもしたら怪我では済みません、ちゃんと気を引き締めて手伝って下さい」
「分かっている、分かっているよ。制服のまま放課後にデートだなんて、いやだ私青春してる。わーい」
聞いてくれたりしないよこの人。本当、苦手な先輩だよまったく……。
いつもの抑揚の無い一定音ボイスではしゃぐ先輩。やれやれ、先が思いやられる。
とりあえず約束は取り次げたので教室に戻ろうとすれば、抱き付いてそれを阻止しようとする先輩。振り払おうとすれば泣きそうになるし、本当に勘弁して下さい先輩……。
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