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半透明と言えばいいのか。いや、限りなく透き通っている透度80くらいのそいつは、膝から下だけでなく全身が俺達には見えていた。
建物と建物の合間。シャッターの下ろされた店の影から、こちらを覗き込む透けていたそいつは、確かに夜にでも見たら幽霊と間違えるかもしれないな。
顔は化け物としか言いようがなかったが。
背格好は人間より少し大きめで、体長が約2メートルは超えている。2足歩行型で足だけ見れば人間なのだけど。
問題の顔。目は顔よりも少し突き出ていて大きく、爬虫類のような皮膚に覆われてカラカラに乾いてそうで。体の方もよく見れば、腕の先の爪は尖って尻尾すら見える。
今日はゴーストバスターをしに来たつもりだったのだが、どうやら俺達はエイリアン退治をしないといけないらしい。
幽霊騒ぎの噂から人間霊を想像していたから、目の前にいる宇宙生物に呆気を取られていたら。金科先輩が服を引っ張ってから俺に聞く。
「ねぇ確か、透明になって人殺しをする化け物の映画ってあったよね?」
「プレデターって名前でしたっけ? 地球を侵略しに来た高度の機械水準を持つ生物達が、地球に降り立って殺害しまくるっていうSFのあれですね」
エイリアンと並ぶとも劣らない有名なアメリカ映画。目の前のそいつがそれに見えるかと言われたら、俺はエイリアンとしか思えないけれど、透明になる化け物という点ではプレデターであろう。
どっちにせよ人外の化け物だ。この地球外生物に対して俺達はどうすべきだ?
「困りましたね。噂の元凶が金科先輩みたいな境遇でしたら、先輩に友達になってもらい穏便に済ませようと思っていたんですが……。
先輩。何とかしてあいつと友好関係を築けませんか?」
「人間でない時点で無理。私と仲良くしたいのなら最低人間、あ、でも猫だけは別。猫は正義(ジャスティス)だから」
そういえば猫好きでしたね。それも中毒的に病んでいるくらい。
で、なくて。
「先輩との友情解決が望めないとしたら、噂を消す為には力付くで排除するしかありませんね。あのエイリアンもどき、どう対処すれば」
と、対エイリアン戦の攻略法を思案しようとしていたら。
建物の隙間にいた化け物が目の前からスッと消えていく。風景に溶け入るように透度が上がっていって。
これは、マズい……!
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