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「やっぱり居やがったな」
完全透明で見えなかった姿が一瞬だけだったが、化け物の元々の色で薄い体がぼやけて見えた。先輩の方も「ほんとだ。いた」と見えたようだ。
さて、ここからどう出るのだろうか。爬虫類のような体付きで単純に人間よりもデカい体相手に、いつもの殴打戦闘が効くとは思えない。
かといって、手頃な武器は何も持ち合わせていないし。先輩も半存在以外ただの人間である。連れて来たからには何か意味があるには違いないだろうが、俺にはサッパリ思い付かない。
後は動くままに、流れに身を任せて待っていれば。
化け物のいる方向に視線を固定させたまま、先輩の手を離してその歩道橋の端まで行って止まる。歩道橋の上から至近距離で、見上げる形になって体が止まれば。
ドシン。と、音と共に橋が揺れて、真後ろから何かの威圧感(プレッシャー)を感じ背後へ視線が向かれた。
いやこれは威圧感というよりも、何か巨大なものの存在感を感じている。
「鳴家君、どうしたの?」
「動かないで下さい先輩!」
俺の方へ近寄ろうとした先輩を制す。でなければそのまま歩道橋を進み、見えないこいつに当たってしまうだろうから。
先輩と俺の間の何もない空間を見つめ、そこに居るであろう奴から目を離さずに、睨み付けていれば。
「キシャャァァァッ!!」
甲高い鳴き声が何もない間から聞こえ。俺の体は右に動いた。
攻撃されたであろう何かをかわしたのである。攻撃を避け、体に当たってくる風圧を感じながら、そのまま前に駆けて全力の前蹴りを繰り出す。
何もない場所であるというのに、その蹴りは何かにぶつかっては空中で止められる。手応え有りだ。
「キシャャァァァッ!! シャェァン!」
雄叫び、そうして体が半歩下がり。右と左へと上体を反らしながら、体に当たってくる風圧を何度も感じる。
全く見えていない攻撃であったが、俺にしてみればそんなもの脅威ではない。
下がるだけの体は、今度は左に体制を屈めなから前に出てボディーぶろーをぶちかます。嫌な触感が手に触れるが、これも手応え有り。
しかし……予想以上に硬いッ!!
打ったこちらの拳の方が痛いくらいである。蹴りとは違い、手の感触は化け物の皮膚の硬さをこちらに伝えて来る。
徒手空拳の肉弾戦では、こちらが圧倒的に不利だ。
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