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気持ちの悪い言葉を吐いた挙げ句に勝手に通話を切った相手が何処に居るのかを想像してみる。
私の服装等について言っていなかったから部屋に小型カメラがあったり盗聴器があったりはしないだろう(酷い時は誰でもわかるような場所にさえ付けていた。私の知り合いに盗聴器や小型カメラを専門に扱ってる人がいたからすぐに取り外して売り払ったけど)
しかし直ぐに来れる場所を考えると……周辺に潜んでいるって事しかわからない。
「……そろそろ怒り時かしら」
考えるときりが無いから諦め、窓を閉めてからベッドに腰掛け独り言をいったが微かに聞こえてくる足音に大きな溜息をついた。
私の部屋の前で足音は止まり、がちゃがちゃとドアノブを捻る音が聞こえた、その行動が暫く続いた後に聞こえてきた音は控え目なノックの音、それでも無視し続けると段々とエスカレートし、ついにはドンドンッと激しく扉を叩き始めた。
「佳弥、俺だよ……なぁ開けてくれよ、愛してるからさ。もう二度と他の女に近寄らせないし近寄らない、話もしない……だから開けてくれ」
強く叩かれた後に聞こえてくる太田の声はマンションの住人に聞かせるような張った声だ、どうせ同情を引かせる為か、くだらない恋人同士の喧嘩だと思い込ませようとしているのだろう、つくづく変な所で凝る奴だ。
「……寝るか」
時計を見ると、既に45分も経過していたらしく外が微かに白んできた。
私は太田を無視しベッドへ潜り込むとそのまま睡魔に襲われ深い眠りについた。
月光に背を向け近付いて来るナニカ
ニタリと口元を歪めながら一歩づつ近寄って来る
逆光で何も見えない筈なのに
近付いて来るナニカの口元だけが赤黒く、鉄のような錆のような臭いを帯びていた。
後少しで私は食われるんだろう
あの赤黒い口で肉を裂かれ、鮮血を溢れさせ
声を出そうとしても出ずに空気だけが洩れ
喉で、ヒュー、ヒュー、と情けない弱々しい音を作り出しながら
どうでもいいような一生が終わる。
……それはそれで素敵だろう、血と肉を喰われて死ねるなら
体内で巡り、喰らった者と死ぬまで一緒に居られるなら……
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