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――鉄臭い吐息を吐きかけられそうになった時、意識が急に浮上した――
少しずつ夢から醒めたのだと理解する脳、目を薄く開けると、全開にしていたカーテンが朝日を防ぐ事無く私に日光を注いでいた。
目覚まし時計を確認すると針はニ時限目の授業が終わる時刻を指していた、私はゆっくりとした動きで立ち上がり、ぼんやりと夢での出来事を思い出しながら携帯を操作して学校へ連絡する事にする。
担任からは特に気にしているような言葉は出ない、私も適当な嘘をつき休む事を伝えてから通話を切るとベッドから這い出し玄関へ向かう、そして鍵を開けてからチェーンを外し、扉を強く開けるとガンッと鈍い音がした
「いっ!」
「起きたか、飯食うなら入れ」
面倒臭さそうに声を掛けてから扉を閉めキッチンへ向かう、昨日の残りものをテーブルに並べ、朝食向けのおかずを作って持って行くと太田が席に着き何故かそわそわとしていた。
「……どうした」
「あ?、いや……」
口ごもる太田から視線を外すとご飯茶碗にご飯をよそい、箸を二膳用意し太田の前にご飯茶碗と箸を置いてから自分の席に箸を置き、私の分のご飯を用意するために食器を取り出す、久々に誰かと食事をするが特に感情が湧くわけではない。
ご飯をよそってから自分の席に着き、箸を手にしてからボソリと頂きますと呟き、茶碗を手に持ち白米を口にした。
太田は相変わらずおどおどしているが無視をして食事を続ける
「……佳弥」
「何」
「こうして飯食うの何回目だろうな」
「アンタの方が知ってるのになんで私に聞くの、無駄な会話をするためにアンタを部屋に入れた訳じゃないんだけど」
筑前煮を一口食べてから目を見て言うと、太田は目を逸らしておかずに箸を伸ばす、特に反論が無いようだ。
「……なぁ、なんで俺の事構うんだ」
「誰も構って無いから、アンタは単なる構ってちゃんなんでしょ? 構わなくて死なれて、私が疑われたら嫌だから構ってあげてるの。じゃあ私の質問にも答えて」
「な、何?」
「なんで私なの」
「はぁ?」
「なんで私に付き纏うの、なんで私以外の人間に付き纏わないの」
「んなこと言われても……」
残り少ない卯の花をご飯の上に乗せてから口に運び、味わうように咀嚼してから飲み込んで沢庵へ箸を向ける、無論一切太田へ視線を向けずにそう一言発しただけでこの場の空気が変わった
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