のび男の悲劇

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お゙がぁぢゃーん! だっ だぢげてぇええ!! 春うららかな日曜日の午前中‥ 関東ど田舎の寒村に子供の悲鳴が響き渡った。 どすた!? のび男!? どこさいるっぺ!!? 庭先で洗濯物を干していた母マサ子は、家の中に向かって大声をあげた。 便所だっぺぇえ!! 即座に返る 我が子のび男の悲痛な叫び。 母の手から洗濯物がどさりと落ちた。 マサ子は 母屋と畑の間にある便所小屋へと走り出した。 母屋の裏の便所小屋まで約50m マサ子は中学校時代のものではあるが、50m走で8秒3の自己最高記録を持っている。 あれから30年‥ 今では若干、実力は落ちているかもしれないが‥しかしどう転んでも、20秒以内には便所小屋に到着できるはず‥ 理系のマサ子は 頭の中で電卓をはじいた。 マサ子は走った。 グランドと違い、石が転がり雑草が生えたコースだ。 はっきりいってコースコンディションは最悪だ。 草の根に足をとられ、ビニールサンダルが脱げそうになった。 ちっ! マサ子は鋭く舌打ちした。 こんな調子じゃ20秒も危ねぇべ‥ マサ子は焦る。 焦りながらもマサ子は走る。 走りながら考えた。 のび男‥ 便壺に落ちたべか?
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