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夕日に照らされる中、汗を流しながら走る姿はとても美しい。いつしか、その姿を美術室からスケッチするのが日課になっていた。 そんなことをしていてバレないかって? ご心配には及びません。なんたって美術部員は私一人だから。 部活の存続の危機だというのに、この状況をありがたいとさえ思っている私は 部長失格なんだろうけどそんなの関係ない。 私の絵が描き終わると同じくらいに彼女の部活も終わる。スケッチブックを鞄にしまい、美術室を出た。 もう外は薄暗くなっていた。 靴を履き変え門をくぐると、前方に同じ学校の生徒の集団が騒がしく歩いていた。 「あっ....」 どうやら陸上部の部員たちみたい。もちろんその中に彼女もいる ここまで毎日スケッチしていれば、名前と学年くらいは知っている。 2年F組 金本詩織(カナモト シオリ) 実を言うと私も2年。 でも彼女がF組なのに対して、私はA組。 教室の階が違う為、ほとんど顔を合わせることもなければ話す機会なんてない。だから多分、彼女は私を知らない。でも、そっちの方が好都合なのかも知れない。 そんな事を考えていると、いつの間にか駅に着いていた。 彼女は電車。私はバス。 ここでお別れ。 「今日もお疲れ様。また明日ね」 聞こえるはずのない別れの言葉をつぶやき、反対方向へ歩き出した。
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