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◆
どのくらい続けただろうか。
塁間ほどの距離を何十、何百と投げては返し、投げては返す。ずっとその繰り返しだった。
「なぁ、そろそろ上がらないか?」
痺れを切らして提案する。流石にやりすぎると身体が弱いため辛いものがある。
「あ、うん。そうだな。一旦休憩しようか。自販機で飲み物買ってくるよ、何がいい?」
「さっぱりしたやつで。センスに任せる」
了解と返事したマネージャーは軽い足取りで自販機へ迎う。
しかし、逆に帰りは重い足取りだった。
「すまない、小銭切れで自販機がお札を受け入れてくれなかったから、一本しか買えなかった。それも、水……」
「じゃ、一口もらうから、あとは全部飲めよ。俺、そんなに水を必要としない人だからさ」
そう言って勢い良くペットボトルの蓋をあけて、少し飲む。そしてソイツを手渡す。
「ほい」
それを俯きながら受け取る。
誰も聞き取れないほど、自分でさえ聞き取れないほど小さな声で一言、呟いて。
「あ、ありがとう」
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