転機

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「えっ?ほ、本当か?」 「嘘言ってどうする。」 「もう取り消し無しだからな?」 「はいはい。もう上がろうぜ」 その日グローブを渡したら、マネージャーはおもちゃを与えられた子どものように顔をぱあっと明るくさせ、その後はニヤニヤに程近い笑顔でいた。 それほどまでに、決して建前ではなく、美濃へのプレーに惚れ込んでいた。 打球反応のスタート、 低姿勢からの数歩の加速、 捕球直前の摺り足、 捕球音さえしない柔らかいグラブタッチ、 捕ってからの流れるステップ、 無駄の無いサイドスロー…… プロを見たかのように電撃が走った、 プロでさえそこまで感銘を受けない。プロなら当たり前だし、その当たり前が出来ないプロも多数存在する。 だが彼はどうか。 近くにいたのだ。こんなにも。それも同い年で。 そして、初めて自分よりも上手い選手を見たということも。
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